令和5年確定申告における税制改正のポイント

 2月16日から確定申告書の提出期間に入りますので、本年度も税制改正のポイントをまとめてみました。今回の改正は、確定申告に関する改正点は少なく、個人で申告をされる方にとっては、住宅ローン控除の見直しが主な改正事項となっています。また、確定申告書の様式が変更となっており、従来存在した確定申告書AとBという区分がなくなり、新しい申告書様式に一本化されています。


1.住宅ローン控除の見直し


住宅ローンにより住居を取得、新築、増改築を行った場合、その住宅ローンの残高に対して一定の割合を税額から控除することができます。従来からあった制度ですが、今回見直しが入っており、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅等、新しい考えも導入されていることから、非常に複雑になった印象です。具体的な内容としては、以下のようなものになっています。

① 住宅ローン控除適用期限を4年延長

②2050年カーボンニュートラル実現に向けた措置
   ㋐ 省エネ性能の高い認定住宅等(※)について、借入限度額上乗せ
   ㋑ 令和6年以降に建築確認を受けた新築住宅につき、省エネ基準への適合を要件化

③会計検査院の指摘への対応と当面の経済状況を踏まえた措置
   ㋐ 控除率が1%→0.7%に引き下げ
   ㋑ 新築住宅等について、控除期間を10年→13年に上乗せ
   ㋒ 住宅ローン控除の適用対象者の所得要件を合計所得3,000万円→2,000万円に引き下げ
   ㋓ 合計所得1,000万円以下の者について、
     令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和
     (特例措置とされていたものを継続)

(※)認定住宅等とは、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅を指します。それぞれの借入限度額については、以下のようになっています。


 【新築住宅・買取再販住宅】

   令和4・5年入居       令和6・7年入居   
認定住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅)     5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円
その他の住宅 3,000万円2,000万円

 

【既存住宅】

   令和4・5年入居     令和6・7年入居   
 認定住宅等(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、
ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅)   
3,000万円3,000万円
 その他の住宅2,000万円2,000万円

 


 

既存住宅においては、築年数要件が廃止され、新耐震基準に適合するものが該当することとなりました。


2.住宅ローン税額控除の適用に係る手続きの改正

①「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書類」の添付が不要

 令和5年1月1日以降に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン税額控除に関して、従来確定申告書に添付が必要とされていた、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書類」の添付が不要となりました。

②住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度の創設
 令和5年1月1日以降に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン税額控除の適用を受けようとする個人は、住宅借入金の借入先である銀行等の債権者に対して、当該個人の指名及び住所、個人番号などを記載した「適用申請書」を提出しなければならなくなっています。これにより、借入先である銀行等の債権者は、住宅借入金等の金額を記載した年末残高調書を所轄税務署長に提出することになります。


3.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正等の期限延長


 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正や特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正など居住用財産に関連する法令の適用期限が2年延長されています。


4.既存住宅の改修工事に関連する特別控除の延長


 既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除や既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、一定の見直しが行われたうえで、適用期限が2年延長されました。


上記のほか、手続き面での変更点として、確定申告において添付すべき書面とされていた、社会保険料控除や小規模企業共済等掛け金控除の金額を証する書類についても、電子データで提出できることとなっています。