監査法人について

2020年10月に新しい監査法人を設立しました。
私自身は、公認会計士第2次試験合格後10年以上にわたっていわゆる大手監査法人で監査業務に従事しておりました。その当時から自分で新しい監査法人を設立して、様々な企業に貢献したいという思いがあり、今回の新監査法人の設立に至りました。

監査法人は、上場企業にとっては馴染み深いものですが、一般にはあまり知られていないものかと思いましたので、今回の監査法人の設立を機に、監査法人とは何かをまとめたいと思います。

1.監査法人とは
監査法人は、公認会計士法に基づく法人で、簡単に言えば、決算書の監査を行うために公認会計士が集まって作る組織です。

公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業としますが(公認会計士法第2条第1項)、現代の企業の監査を個人で行うことは現実的ではないことから、これを組織として行うことを目的として、公認会計士法に基づいて設立された法人を監査法人として定めています(公認会計士法第1条の三第3項)。

組織として行うことを裏付けるため、監査法人を設立するには、5人以上の公認会計士が社員となって設立する必要があります(公認会計士法第34条の7第1項)。

監査法人自体は、1966年に公認会計士法上で設立が認められ、1967年に第一号の事務所が承認されていることから、それほど昔からある組織というわけではありません。これは、日本や海外における大規模企業の粉飾決算やそれによる倒産が発生したことから、組織的な監査への要請が強くなり認められたものと考えられます。

2.監査法人の業務
監査法人の業務としては、公認会計士法第34条の五において、以下の3つが定められています。
① 他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。(監査又は証明業務)
②他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。(コンサルティング業務、「2項業務」と言われる)
③公認会計士試験に合格した者に対する実務補習
 一般に知られている監査法人の業務は、上記①にある財務書類の監査かと思います。監査法人の部署によって違いますが、大手監査法人のころの私自身の業務としては、監査が8割、上記②にあるコンサルティング業務が2割といった割合だったかと思います。
 

3.監査法人の規模
2021年5月の時点で監査法人として登録されている数は、261あります。地域別にみると、東京が167、近畿が35、東海が14となっており、それ以外の地域は1桁といった形です。規模で考えると、4大監査法人と言われる、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた監査法人が、業務収入で1千億円から500億を超える規模になっています。続いて準大手とよばれる規模の監査法人が5法人程度あります。それ以外の監査法人は中小規模監査法人とよばれますが、監査先の企業数にはかなり差があり、多いところで40社程度、少ないと1社となっています。

4.まとめに
  今回の監査法人設立の目的については、様々な企業に貢献したいためと記載しましたが、具体的には上場準備企業の監査を積極的に行いたいと思っています。私が大手監査法人にいたころは、上場準備企業に対する監査も相当数対応していましたが、現在では監査法人の人員数や報酬の問題などから、上場準備企業へ積極的には関与しなくなっていると思われます。ただし、大手監査法人は海外の会計事務所との提携を行い、大規模なシステム投資を行う必要があること、また、大手監査法人が東証1部上場のグローバル企業の監査を行う必要性などから、このように上場準備の小規模な企業の監査を行えないのは、やむを得ないことと思います。このため、我々のような中小規模の監査法人が、これからの日本の活力になるような上場準備企業の監査を積極的に対応し、我々の規模に見合った経済への貢献を継続的に行いたいと思っています。

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